身の丈を知るということ
今更言うまでもなく富士山は日本で一番標高の高い山である。3,776メートル。10年前に家族5人でこの山に登った。
一番楽な初心者コースだというので、たしか、『御殿場口』から登ったと思う。ガイドブックには4時間半位で頂上に着けると書いてあった。ガイドブックほど当てにならないものはない。朝9時から登り始め、頂上に着いたのは17時過ぎだった。8時間以上掛かった。
5合目の入り口では暑さ厳しく、半袖で勇ましく登り始めた。だんだんと薄ら寒くなってくる。突風が吹いてくる。寒い。空気が薄くなり、10歩歩くと立ち止まらなければいられなくなる。真面目にこのまま立往生したら『死ぬ』と感じた。こんな経験は初めてだ。
眼下に広がる景色は雄大で綺麗だが、感激している余裕などもはやない。妻の荷物を持ち、4年生の三男坊を抱っこして登った。この日ばかりは妻はしおらしく、三男坊は愛おしく思えた。
長男は中学校1年生だったが、「若いっていいなー」とつくづく思ったものだ。息上がる私達を差し置いてすたすたと登っていく。10代が一番体力がある時期なのだろうか。
くたくたになって頂上にたどり着いた時、既に富士山頂神社は営業を終了していた。道中杖に焼印をもらいながら登ってきたのだが、最後にもらうことが叶わなかった。
山小屋で食べた牛丼は『根っこ飯』。三男坊は食べながら寝ていた。ずぶ濡れの雨合羽のまま冷たい布団に入った頃、5年生の次男坊が突然泣きながら「タクシーを呼んでくれー」と叫んだ。緊張感と疲労感が絶頂に達したのだろう。私も疲れているが、冷たさと寝心地の悪さでほとんど眠ることなく夜明け前に下山を開始した。
軽度の登山病で頭が痛い。しかし、標高が下がるにつれて楽になった。ご来光は途中で薄らとした雲の合間から見ることができた。私としては神社の焼き印をもらいに再度登ろうと思うのだが、誰も返事をしない。みんなよほど堪えたのだろう。
私は会社で「上を見てもきりがない。下を見てもきりがない。でも、自分がどこら辺にいるかを知ることは大事だ。そして、手を伸ばして届きそうなところから目標設定をして、一つ一つクリアーしてさらに上を目指していこう。金谷山をクリアーしたら、南葉山、米山、妙高山……最終的に富士山を制覇しよう。」という話をしたことがある。
実力を過度に超える背伸びはしない。自分の身の丈を知ることが大事てある。いきなりてっぺんにチャレンジしても跳ね返されるだけである。むしろ、大きく傷つくかもしれない。富士山登山の苦い経験の話から随分大きな話に展開してしまったようである。
投稿日|2013.02.02 社長ブログ